マネージャーに求められる視点は多岐にわたります。
日々の業務では、目の前の課題に対処しながらも、全体を俯瞰し、未来を見据え、部下を適切に支援することが求められます。
そこで、マネージャーが持つべき4つの「目」を紹介します。
それぞれの「目」を使い分けることで、より本質的な課題解決が可能になります。
①鳥の目:俯瞰する(マクロ視点)
物事を大局的に捉える視点です。
例えば、部下のコンプライアンス違反が発覚したとき、単なる「その違反への対処」に終始するのではなく、以下のような視点で考えます。
• なぜ起きたのか?(根本原因の特定)
• 日常的に発生しているのか?(頻度の確認)
• 他の案件や他のメンバーにも影響があるか?(横展開)
• 組織の構造的な問題ではないか?(仕組みの欠陥)
• 潜在的なリスクは?今後同じ問題が発生する可能性は?(リスク管理)
このように、目の前の事象を広い視点で捉えること=根本原因や関連事象を探ることで、対処療法ではなく、本質的な解決策を導き出すことができます。
結果として、問題の再発防止や組織全体の改善にもつながるのです。
②虫の目:細部を見る(ミクロ視点)
鳥の目がマクロ視点であるのに対し、虫の目はミクロ視点で解像度を上げて見ることです。
同じコンプライアンス違反の例で言えば、以下のような点を深掘りします。
• 具体的に何が起きたのか?(事実確認)
• どんな環境で発生したのか?(社内のルール・慣習・風土)
• その部下の特性は?どのような思考で行動したのか?(個人の行動特性・モチベーション・認識)
例えば、部下が「業務の効率を優先するあまり、ルールを軽視していた」としたら、単なる違反処罰では解決しません。
「なぜその選択をしたのか?」
「その行動が生まれた組織の文化はどうなっているのか?」
こうした細部を深く観察し、真の課題を見極めるのが虫の目の役割です。
③魚の目:潮流を読む(未来視点)
魚の目とはトレンドや流れを読む視点です。つまり未来から考える視点とも言えます。」
コンプライアンス違反の例で考えると、次のような視点が必要になります。
• この問題が続くと、組織にどんな影響が出るか?(リスク予測)
• 逆に今この問題を解決すると、どんな良い影響があるか?(ポジティブな変化)
• 業界全体や社会の流れを踏まえたとき、この問題はどのように見られるか?(外部環境との関連性)
例えば、「コンプライアンス違反を放置すれば、組織の倫理観が崩れ、やがて大きな不正につながる可能性がある」と予測できるかもしれません。
また、逆に「今の段階でこの問題を解決すれば、組織全体の信頼感が高まり、より良い企業文化が醸成される」とも考えられます。
魚の目を持つことで、短期的な対策ではなく、長期的な視点で最適な判断をすることが可能になります。
④親の目:部下を見守る(グリップする)
マネージャーには、部下を適切に指導し、見守る「親の目」も求められます。
コンプライアンス違反が起こらないようにするために、以下のようなアプローチが重要になります。
• 部下のタスクに対するモチベーションや能力を見極める(SL理論に基づく指導)
• 過干渉になりすぎず、適度に見守る(信頼関係を築く)
• 「放置」ではなく、適度な距離感でサポートする(安心感を与える)
例えば、「いきなり厳しく管理する」のではなく、「部下が自主的にコンプライアンスを意識できる環境を作る」ことが理想的です。
部下が自分で考え、正しい判断ができるようになることが、最終的には最も効果的なリスクマネジメントになります。
まとめ:4つの目を組み合わせる
マネージャーには、鳥の目・虫の目・魚の目・親の目の4つの視点が必要です。
目の種類 役割 具体例
鳥の目 俯瞰する(マクロ視点) 問題の本質や再発リスクを見極める
虫の目 細部を見る(ミクロ視点) 具体的な背景や個々の事情を深掘りする
魚の目 潮流を読む(未来視点) この問題が組織や社会にどう影響するかを考える
親の目 部下を見守る(リーダーシップ) 適切な距離感でサポートし、成長を促す
この4つの視点を組み合わせることで、単なる対処療法ではなく、本質的な課題解決ができるようになります。
また、部下の成長を促し、組織の健全な発展にもつながります。
【コンプライアンス違反が発覚した際の適切な対応手順】
以下のステップを踏むと効果的です。
- 事実確認(虫の目)
まずは、「本当に違反があったのか?」を正確に把握する必要があります。
情報が不確かなまま判断すると、不適切な対応や誤解を生む可能性があります。
• 何が起きたのか?(具体的な事象)
• 誰が関与しているのか?(関係者の特定)
• どのような状況で発生したのか?(背景や文脈)
• 規則や法律に照らし合わせて、どの程度の違反か?(重大性の判断)
📌 ここでのポイント:
• ヒアリングは冷静に、公平な立場で行う
• 証拠(書類・メール・録音など)があれば確認する
• 部下が萎縮しないよう、責める姿勢ではなく事実を聞き取る
- 背景・原因分析(鳥の目 & 虫の目)
違反の根本原因を突き止めることで、再発防止につなげることができます。
• 個人的な問題か?(部下の認識不足・能力不足・意図的な行為など)
• 組織的な問題か?(ルールが曖昧・教育不足・プレッシャー環境など)
• 環境要因か?(業務フロー・ノルマ・市場の圧力など)
📌 ここでのポイント:
• 「なぜ?」を繰り返し、根本的な原因にたどり着く(5Why分析)
• 個人に責任を押し付けるのではなく、仕組みとしての問題がないか考える
- 影響範囲の確認(魚の目)
コンプライアンス違反が組織や外部環境にどのような影響を与えるのかを考えます。
• すでに被害が出ているか?(顧客・社内・外部機関への影響)
• 長期的に見てどんなリスクがあるか?(信頼低下・法的問題・ブランド毀損)
• 放置するとどうなるか?(他の社員への影響・組織風土の悪化)
📌 ここでのポイント:
• 緊急対応が必要かどうかを判断
• 被害が拡大しないように早めに対応策を打つ
• 逆に、今しっかり対処することで信頼回復につながる場合もある
- 対応策の決定(鳥の目 & 親の目)
事実と原因、影響範囲を把握したら、適切な対応策を決めます。
• 個別対応(当事者への指導、教育、処分)
• 組織的対応(ルールの見直し、社内教育の強化)
• 再発防止策(チェック体制の強化、仕組み改善)
📌 ここでのポイント:
• 感情的な処分ではなく、冷静に判断する
• 過度に厳しくしすぎると、部下が萎縮し、報告が上がりにくくなる
• 逆に甘すぎると、組織全体のコンプライアンス意識が低下する
⚠️重要なのは、「処罰すること」ではなく、「今後どう改善するか」
- フォローアップと風土づくり(親の目)
問題解決だけで終わるのではなく、再発防止と組織の健全な風土づくりに努めます。
• 部下が同じミスをしないように定期的に確認する
• コンプライアンス意識を高めるための仕組みを作る(事例共有・研修)
• 心理的安全性を確保し、「相談しやすい環境」を作る
📌 ここでのポイント:
• 「報告したら怒られる」ではなく、「報告することが組織の成長につながる」と感じさせる
• 部下が安心して働ける環境を作ることが、長期的なコンプライアンス向上につながる
適切な順番まとめ
ステップ 視点 具体的にやること
①事実確認 🐛虫の目 何が起きたかを正確に把握する(証拠・関係者ヒアリング)→短期的対応
②背景・原因分析 🦅鳥の目 & 🐛虫の目 根本原因を探る(個人の問題?組織の問題?)
③影響範囲の確認 🐟魚の目 この問題が将来にどう影響するかを予測
④対応策の決定 🦅鳥の目 & 👨👩👧👦親の目 適切な処分と再発防止策を考える
⑤フォローアップと風土づくり 👨👩👧👦親の目 心理的安全性を高め、再発しない仕組みを作る→長期的対応
最後に:マネージャーが意識すべきこと
1. 感情的にならず、冷静に事実と原因を分析する
2. 「個人の責任追及」ではなく「組織としての改善」に目を向ける
3. 報告しやすい環境を整え、コンプライアンス風土を醸成する
4. 厳しさと優しさのバランスを取り、信頼関係を築く
5. 「今の対応が、未来の組織文化を作る」と意識する
この順番を意識することで、単なる問題処理ではなく、組織をより良くするためのマネジメントにつながります!
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