1. KPIが「仕事の目的」になっていないか?
本社から降りてくるKPIに対して、現場はどれくらい納得しているだろうか?
本社の優秀な人たちが真剣に考えたKPIのはずだが、多くの現場でKPIが機能していない。
その根本原因は、「KPIを決めること」が目的化し、成果につながる本質的な指標になっていないからだ。
例えば、あるマネージャーが 「KPIはさっさと達成して、本来の仕事に取りかかろう!」 と言っていた。
本来、KPIは「成果を出すための指標」なのに、KPIを達成すること自体が仕事になってしまっている。
部下からすれば、「じゃあ、KPIって何のためにあるの?」 という疑問が生まれるのは当然だ。
2. KPIが機能しない理由
KPIは本来、「成果につながる行動を評価するための指標」 であるべきだが、
実際には、多くの現場でKPIが形骸化し、機能していない。
その主な要因は以下の3つである。
① 本社と現場の視点のズレ
- 本社(マーケティング・経営層) は 「データで意思決定」 したい
- 現場(営業) は 「実体験をもとに、売上につながる行動」 を重視する
このギャップが埋まらず、
本社は「数値化しやすい指標(訪問回数や講演会開催数など)」を設定しがち になる。
しかし、「数値化しやすい」=「成果につながる」ではない。
結果として、MRが売上につながる行動よりも、「KPIのための行動」 を優先せざるを得なくなる。
② Veevaなどのデータ管理システムがKPIの歪みを助長している(最も大きな問題)
本社はVeevaのようなデータ管理システムを使ってKPIを決めるが、
このシステムは「数値化しやすいデータ」を優先する構造になっている。
その結果、
- KPIを達成するための「空打ち」 が常態化する
- MRが実態とは異なるデータを入力することで、さらにズレたKPIが設定される
つまり、本社は 「実態に即したKPIを設定している」と思っているが、
実際には、MRの作り出したデータを元にKPIが決められ、悪循環に陥っている。
実際、現場の声を吸い上げずにKPIを設定すると、
「嘘にまみれたデータ」を基にした巨大なKPIモンスター が生まれてしまう。
③ KPIの項目が多すぎる
- 「これも重要、あれも重要」 とKPIが増えすぎてしまい、
現場のMRが管理しきれなくなっている。 - 結果として、MRは 「すべてを少しずつ達成する」ことに追われ、
最も重要なKPIに集中できなくなる。 - シンプルで意味のあるKPIに絞るべきなのに、不要な指標が多すぎる。
3. では、どうすれば良いのか?
KPIを本来の役割に戻し、実態に即したものにするためには、以下の2つのポイントが必要である。
① 本社がもっと現場感を持つべき
本社がKPIを設定する際に、
- 売上につながる行動「だけ」に焦点を当てる
- MRのリアルな営業体験を反映するために、定性的なフィードバックを取り入れる
- 本社が 一律のKPI を設定すると、抽象度が高すぎて現場の実態とズレてしまう
だからこそ、支店やエリア単位で、現場の意見を反映したKPIを設定するのもあり
こうしたプロセスを導入し、「データだけで決めるKPI」から「現場とリンクしたKPI」へシフトする必要がある。
② MRが嘘をつけないKPIが必要
現在のKPIの大きな問題は、
「MRがKPI達成のために嘘をつける構造」 になっていること。
これを解決しない限り、KPIが実態を反映することはない。
では、どうすればMRが嘘をつけないKPIを作れるか?
以下の視点が重要になる。
✅ 1) 数値の捏造ができない指標にする
- 例えば、「訪問回数」や「コール数」は簡単に水増しできる。
→ 代わりに 「講演会に対する医師直筆のアンケート」や「詳細な処方フォロー状況」 などの指標を取り入れる。
✅ 2) 定性的なKPIを取り入れる
- 定量的な数値だけでなく、「KOLとの関係構築」「議論の質」「新たな提案の創出」 などの指標を評価対象にする。
- これを実現するために、データではなく現場の上司の評価を重視する仕組み を設計する。
③ KPIはシンプルにすべき
- KPIが多すぎることでMRの負担が増え、最も重要な行動に集中できなくなる。
- KPIは 「数ではなく質を重視」 し、必要最低限に絞るべき。
- 本当に重要な指標を3〜5つに厳選し、MRが 「成果につながる行動」に集中できる環境 を作る。
結論
📌 KPIが機能しない原因は、
① 本社と現場のギャップ
② Veevaのデータ偏重構造
③ KPIの多さ
📌 この悪循環を断ち切るには、以下の3つが必要。
1) 本社がもっと現場感を持つ(思い切って支店単位で設定させる)
2) MRが嘘をつけないKPIを導入する
3) KPIをシンプルにする
これが地獄への入口かもしれない
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