仮説思考は万能ではない
仮説思考は、MRだけでなく、すべてのビジネスマンにとって必須のスキルである。
しかし、必ずしも仮説思考だけで物事がうまくいくとは限らない。
むしろ、誤った仮説思考により、非効率な行動をしてしまうこともある。
なぜなら、下手な仮説思考は、自らの過去の経験=バイアスに無意識に引っ張られる ことが多いからだ。
かつて成功した施策が、現在も通用するとは限らない。
そのため、マネージャーは自らのバイアスには細心の注意を払う必要がある。
MRにおける仮説思考の落とし穴
例えば、あるマネージャーが過去にプレイヤー時代、「とにかく訪問回数を増やせば成果が出る」 という経験をしたとする。
その経験が成功体験となり、「訪問すれば売れる」 という仮説を立て、部下に「とにかく先生に会ってこい!」 と指示を出した。
しかし、現在は訪問規制が厳しく、医師の時間も限られている時代。
無理に訪問を増やそうとしても、「アポイントが取れない」「先生が迷惑に感じる」 などの理由で、逆効果になることがある。
結果的に、部下は無駄なアクションを繰り返し、時間と体力だけを浪費してしまった。
このように、過去の成功体験に引っ張られた仮説は、必ずしも正しいとは限らない。
バイアスにとらわれないために
このようなミスを最小限にするためには、やはり 「鳥の目=俯瞰する視点」 を持つことが重要だ。
✅ 現場の環境をよく考える
- 市場の変化(規制、競争環境、医師のニーズ)を把握する
- 過去の成功体験ではなく、現在のデータをもとに判断する
✅ 本質的な目的を明確にし、複数の手段を検討する
- 「本質的な目的は何か?」 を明確にすることで、一つの仮説に縛られず、複数の手段を吟味する
- 「売上を伸ばす」ための手段は、訪問回数だけではない
- 講演会の質を上げる
- オンライン面談の活用
- 院内キーマンへのアプローチ など、他の手段もある
✅ 目的を整理し、手段を書き出す
- 「そもそも何を達成したいのか?」 を明確にし、
仮説以外の手段もリストアップすることで、漏れを防ぐ
マネージャーはより広い視点で考える
マネージャーの役割は、単に「成功パターンを部下に伝えること」ではない。
むしろ、「過去の成功体験にとらわれず、変化する環境に適応すること」 こそが重要である。
✅ 現場の環境を俯瞰し、適切な仮説を立てる
✅ 本質的な目的を意識し、複数の手段を検討する
✅ 過去の経験ではなく、現状のデータを活用する
このような思考を持つことで、仮説に足元をすくわれるリスクを最小限にできる。
最後に
「昔はこうだった」「俺はこれで成功した」 は、部下から最も嫌われる発言のひとつだ。
過去の経験は貴重だが、それが現在も通用するとは限らない。
マネージャーは、「自分の成功体験を押し付けるのではなく、今の状況に合った最適な方法を考える」 ことを常に意識しよう。
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